難病患者の海外旅行ガイド

難病・特定疾患の方へ。海外旅行の前にご覧ください。

多発性筋炎・皮膚筋炎患者の海外旅行の注意事項

多発性筋炎・皮膚筋炎と海外旅行

海外旅行

多発性筋炎・皮膚筋炎の発症直後は、安静にする必要があるため、海外旅行へ行くことはできません。投薬治療や筋力回復のためのリハビリを進めた上で、日常生活が問題なく送れるようになれば、海外旅行は可能でしょう。
ただ、海外旅行へ行くときは、必ず主治医の許可を得てください。そして、次のことに注意してください。

無理のないスケジュールを立てる

多発性筋炎・皮膚筋炎の方は、非常に疲れやすいので、旅行のスケジュールは無理のないようにしましょう。夜はホテルでゆっくりするなど、体に無理のない範囲で観光を楽しんでください。

また、無理をすると疲れが出るだけではなくストレスにもなります。ストレスがたまると、病気が悪化し合併症を引き起こす可能性がでてきてしまうので、移動時間が短い国への旅行がおすすめです。

食べ物に注意する

多発性筋炎・皮膚筋炎の方は、高タンパク高カロリーで消化の良い食事をとる必要があります。旅先でも、体調が悪化しないように食事に気をつけましょう。
また、ステロイド服用中で副作用で体重が増えている方は、カロリーの摂取し過ぎに気をつけましょう。

紫外線対策をしっかりとする

皮膚筋炎の方は、紫外線に当たりすぎると皮疹が悪化することもあります。こまめに日焼け止めクリームを塗ったり、帽子やサングラスを身につけるなどの対策をし、紫外線から肌を守りましょう。
旅行先を選ぶとき、紫外線の強い国(オーストラリアやニュージーランドなど)を避けるのも良いでしょう。

薬剤証明書や診断書を携行する

旅行へ行くときも普段服用してくる処方薬を持っていく必要がありますが、処方薬を持って海外へ行くとき、入国審査でトラブルになる可能性もあります(日本では合法な薬であっても、海外では違法な薬があるため)。

そのようなトラブルを避けるために、旅行の前に必ず「英文薬剤証明書」を主治医に発行してもらいましょう。薬剤証明書があれば、治療のための適切な薬であることが証明されるので、トラブルを避けられます。

また、薬剤証明書と一緒に、医師の診断書を併せて持っていると心強いですね。渡航先で体調が悪化したときに、診断書があれば適切な処置をして貰えるでしょう。

薬は多めに持っていく

海外では、どのようなトラブルがあるかわかりません。航空機のトラブルで、予定よりも長く滞在せざるをえないことも考えられます。そのようなトラブルに備え、薬は多めに持って行きましょう。

感染症対策をしっかりする

ステロイド剤を服用している方は、副作用により免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなっています。感染症にかからないようにするため、移動中は常にマスクをしたり、こまめに手洗いうがいをするなどの感染症対策をしっかりしましょう。

また、多発性筋炎・皮膚筋炎の患者の中には、手足の末端の血流に障害があるために、小さな傷でも治りにくくなっている方もいます。傷口から感染症になることもありますので、予防のために消毒薬を持っていくと良いでしょう。

海外旅行傷害保険には必ず加入しておく

渡航先での体調悪化等、万が一に備えて海外旅行保険の加入しておきましょう。海外では健康保険が効かないため、病院にかかったときの治療費はかなり高額になります

ただ、多発性筋炎・皮膚筋炎などの持病がある場合、健康状態の告知に引っかかり海外旅行保険に加入できないことや、持病については補償対象外とされてしまうケースがあります(治療をしていなくても、経過観察のために定期的に通院していれば告知対象となるのでご注意ください)。

国内の保険会社では東京海上日動火災保険とAIG保険会社の2社が、持病も補償される海外旅行傷害保険を販売しています(旅行期間が31日まで)。
東京海上日動火災保険では最寄りの保険代理店を探して加入することになり、AIG保険会社ではインターネットからも加入することが可能です。

他の保険会社でも保険代理店などの窓口で相談すれば加入できるかもしれませんので、詳しくは各保険会社に問い合わせてみましょう。
窓口での加入の場合は加入審査に時間がかかったり、申し込みをしても加入を断られることもあるので、保険の手続きは余裕をもって早めに済ませておきましょう。

そもそも多発性筋炎・皮膚筋炎とはどんな疾患なのか?

診察風景

多発性筋炎は、筋肉が侵されることにより、筋肉に力が入らなくなったり、痛みを感じる原因不明の病気です。全身症状として、発熱や食欲不振などが起こることもあります。
皮膚筋炎は、多発性筋炎の症状に加え、ゴットロン徴候(手指関節背面の皮が剥げた紅色の皮疹)やヘリオトロープ疹(眼瞼部のはれぼったい紫紅色の皮疹)などの特徴的な皮疹がみられます。

これらの病気は、肺・関節・心臓・消化管などの臓器障害を合併することもあります。特に、間質性肺炎(自己免疫が自身の肺を攻撃して引き起こされる肺炎)や不整脈などの心症状、悪性腫瘍の合併には注意が必要です。

日本には2万人以上の患者がいると推定されています。女性患者の割合が多く、発症のピークは、5~14歳と35~64歳です。

多発性筋炎・皮膚筋炎の治療方法

治療は、薬物治療が中心です。
ステロイド剤の治療が中心ですが、効果がなかったり副作用が重い場合は、免疫抑制剤を用いることもあります。重大な合併症(悪性腫瘍や急速進行性間質性肺炎など)がある場合は、ステロイド剤と免疫抑制剤を並行して使用することもあります。

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公開日:
最終更新日:2024/09/11