クローン病患者の海外旅行の注意事項
クローン病と海外旅行
クローン病を患っていても、海外旅行へ行かれている方はたくさんいらっしゃいますが、医師に相談の上、次のことに気をつけて海外旅行を楽しんでください。
海外現地での食事に気をつけましょう
クローン病の方の食事は、病変の部位によって個人差はありますが、症状が出ている時は低脂肪・低残渣が基本です。
症状が出ていない時は、通常の食事で問題無いとされていますが、食事をきっかけに病態が悪化することもあるので、食べ過ぎなど注意が必要です。
特に動物性の脂肪は刺激が強く、炎症を悪化させる原因となります。症状が悪化しないように、旅行先でも食事に気をつけましょう。
出来れば、事前に機内食やレストランのメニューを確認しておくといいですね。心配であれば日本食を少し持っていくと良いでしょう。
実際に、クローン病の方で、海外旅行へ行くときにはレトルトのご飯やお味噌汁を持っていく方もいらっしゃるようです。
薬剤証明書と医師の診断書を用意する
海外旅行へ行くときは、処方薬を忘れずに持ち込んでください。
ただ処方薬を海外に持ち込む場合、入国審査でトラブルになることもあります(日本では合法でも、海外では違法となる処方薬もあるので)。
そのようなトラブルを避けるために、主治医に書いてもらった英文の薬剤証明書を用意しましょう。薬剤証明書があれば、持ち込んだ薬が治療のために使用している適切なものであると証明されます。
また、薬物証明書と一緒に、医師の診断書も必ず用意しましょう。病名や症状を記入した診断書があれば、旅行先で体調が悪化したときに、適切な処置をしてもらえます。
処方薬は滞在日数分より多めに持っていく
航空機の遅延や欠航など、トラブルにより滞在期間を延長せざるをえなくなることもあります。そのようなトラブルに備えて、処方薬は多めに持って行きましょう。
機内ではトイレの近くに座る
急な腹痛や下痢に備え、航空機ではできるだけトイレの近くの座席に座りましょう。事前に、航空会社に事情を説明すれば、考慮していただけます。
トイレが利用できる施設をあらかじめ調べておきましょう
国にもよりますが、海外では日本ほど公衆トイレが多くなく、また充実もしていません。
旅行先のホテルや公共施設などを調べておき、もしものときにはできるだけすぐにトイレに迎えるようあらかじめ現地情報を調べておきましょう。
海外旅行傷害保険には必ず加入しておく
渡航先での体調悪化等、万が一に備えて海外旅行保険の加入しておきましょう。海外では健康保険が効かないため、病院にかかったときの治療費はかなり高額になります。
ただ、クローン病などの持病がある場合、健康状態の告知に引っかかり海外旅行保険に加入できないことや、持病については補償対象外とされてしまうケースがあります(治療をしていなくても、経過観察のために定期的に通院していれば告知対象となるのでご注意ください)。
国内の保険会社では東京海上日動火災保険とAIG保険会社の2社が、持病も補償される海外旅行傷害保険を販売しています(旅行期間が31日まで)。
東京海上日動火災保険では最寄りの保険代理店を探して加入することになり、AIG保険会社ではインターネットからも加入することが可能です。
他の保険会社でも保険代理店などの窓口で相談すれば加入できるかもしれませんので、詳しくは各保険会社に問い合わせてみましょう。
窓口での加入の場合は加入審査に時間がかかったり、申し込みをしても加入を断られることもあるので、保険の手続きは余裕をもって早めに済ませておきましょう。
そもそもクローン病とはどんな疾患なのか?
クローン病は、「炎症性腸疾患」(大腸や小腸の粘膜に慢性の炎症や潰瘍を引き起こす疾患の総称)の1種です。口腔から肛門の消化器官のどの部位でも、炎症や潰瘍が起きますが、特に小腸の末端部が病変に侵されやすいです。
この病気は、10~20代の若年層の発病が多く、男性患者は女性の約2倍です。日本の患者数は4万人超と推定されます。世界的には、北米やヨーロッパなどの先進国で発症率が高いです。
クローン病の症状
症状は、病変に侵される部位によって様々ですが、半数以上の患者が腹痛と下痢の症状を訴えます。それ以外の症状は、血便・体重減少・発熱・貧血・全身倦怠感などがあります。症状は寛解と再燃を繰り返し、完治することは難しいです。
また、合併症には次のようなものがあります。
○腸管の合併症:瘻孔(炎症によって菅状の穴が生じること)、狭窄、膿瘍(膿が溜まること) など
○腸管以外の合併症:関節炎、虹彩炎、結節性紅斑、肛門部病変 など
クローン病の治療方法
治療は、内科治療と外科治療がありますが、主体となるのは内科治療です。
内科治療では、栄養療法と薬物療法を行います。栄養療法では、栄養状態の改善などを行います。薬物療法は、副腎皮質ステロイド・免疫調整薬・5ーアミノサリチル酸製薬を内服します。症状が改善しても、再燃を予防するために免疫調整薬や5ーアミノサリチル酸製薬は服用し続けます。
外科治療(手術)は、腸閉塞や膿瘍などの合併症があるときに行います。クローン病の患者は、生涯のうちに1度は外科治療が必要となることが多いです。ただ、新薬の登場により、将来的には手術を必要とする患者が少なくなることが期待されています。
この記事の参考文献・Webサイト
- 難病情報センター(公益財団法人 難病医学研究財団)
- クローンフロンティア(田辺三菱製薬)
- 海外旅行医学ハンドブック(山と溪谷社 2003/3/1)
公開日:
最終更新日:2024/09/11