難病患者の海外旅行ガイド

難病・特定疾患の方へ。海外旅行の前にご覧ください。

混合性結合組織病患者の海外旅行の注意事項

混合性結合組織病と海外旅行

海外旅行

混合性結合組織病の方が海外旅行へ行くときは、事前に主治医に相談し、次のことに気をつけて旅行を楽しみましょう。

寒冷地に行く場合は冷えに注意

寒さや緊張によって手指の血管が収縮してレノイー現象が生じることがあるため、寒さ対策が重要です。
旅行先が寒い地域の場合はコートやマフラーなどでの防寒対策に加えて、特に手指を冷やさないよう、手袋やカイロを活用するといいでしょう。
また、手洗いもできるだけ温水を使用し、冷たい水に長時間触れて手を冷やさないよう注意しましょう。

航空機内や現地での乾燥対策

混合性結合組織病の人は皮膚の乾燥にも対策が必要です。
特に航空機内は乾燥しやすくなっているため、保湿剤入りのハンドクリームやボディクリームをこまめに塗り直すなど、しっかりと乾燥対策を行いましょう。

疲労を避けてしっかりと休養を

疲れが溜まると症状の悪化に繋がるため、疲れる前に休憩を取ることが大切です。
そのためには余裕のある旅行計画を立てることが重要ですので、事前に休憩をスケジュールに組み込んでおくのもいいでしょう。
また、旅行先では魅力的な夜の観光地もありますが、夜間は十分な睡眠時間を確保し、休息をとりましょう。

薬剤証明書を携行する

治療のために薬を処方されている人は、旅行前にかかりつけ医で英文の薬剤証明書を取得しておきましょう。
自分で使う薬は航空機内に持ち込むことができますが、入国審査で確認されることがあるため、トラブル回避のためにも手荷物に入れて携行することが大切です。
また、何らかの事情で滞在が伸びたり、荷物を紛失したりすることに備えて、薬は旅行日程分よりも多めに持って行きましょう。

海外旅行傷害保険には必ず加入しておく

海外での急な体調悪化など、予期せぬトラブルに備えて海外旅行傷害保険に加入しておきましょう。
海外で病院を受診すると、かかった医療費が全額自己負担となるため、保険に加入していない場合は高額な請求を受けることになります

ただし、混合性結合組織病などの持病がある人は、海外旅行傷害保険に加入できなかったり、持病が補償対象外となってしまったりすることがあります。
国内の保険会社では、東京海上日動火災保険とAIG損害保険の2社が、持病も補償される海外旅行傷害保険を販売しています(旅行期間31日までが対象)。
東京海上日動火災保険は最寄りの保険代理店で加入手続きができ、AIG損害保険では保険代理店のほかインターネットでも加入することが可能です。

他の保険会社でも保険代理店などの窓口で加入できる可能性もありますので、各保険会社に問い合わせて確認してみましょう。
なお、窓口での加入は手続きに時間がかかったり、加入を断られてしまったりする可能性もありますので、渡航前に余裕をもって手続きしておくことが大切です。

そもそも混合性結合組織病とはどんな疾患なのか?

診察風景

混合性結合組織病は、膠原病の代表疾患である全身性エリテマトーデス(SLE)、全身性強皮症、多発性筋炎・皮膚筋炎などの症状が混在する疾患です。
患者には圧倒的に女性が多く、30~40代に多いとされていますが、年代を問わず発症することがあります。
日本国内には約1万人の患者がいると言われています。

この疾患は自己免疫疾患と考えられていますが、他の膠原病と同様に原因は特定されていません。
慢性疾患であるため長期間の治療が必要となり、病変は多彩で、症状の種類や重症度も多様です。
発症からの予後は比較的良好とされていますが、根治的な治療法は現在のところありません。

混合性結合組織病の症状

混合性結合組織病の多くは、初期症状としてレノイー現象が見られます。
これは、寒冷刺激や精神的緊張によって血管が収縮し、数分から数十分のあいだに手指が蒼白化し、暗紫色、紅潮を経て元の色に戻るというものです。
他にも、手指から手の甲にかけて腫れぼったくなるソーセージ用腫脹が80~90%に現れます。

さらに、膠原病の代表疾患であるSLEによく似た症状として見られるのが、多発関節炎やリンパ節腫脹、顔面紅斑など、全身性強皮症によく似た症状としては手指の皮膚硬化や間質性肺疾患、食堂機能の低下などです。
その他、多発性筋炎・皮膚筋炎に似た症状や、肺動脈性肺高血圧症、無菌性髄膜炎、三叉神経障害などが挙げられます。

混合性結合組織病の治療方法

混合性結合組織病は原因が不明であり、根治させるための治療を行うことができません。
そのため、現れた症状に対して治療が行われます。

基本的には副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬を用いた免疫抑制療法が行われ、症状の程度に応じて適切な治療薬が選択されます。
重症の場合には、副腎皮質ステロイドの大量投与やステロイドパルス療法が行われることもあります。
全身性エリテマトーデス様症状や多発性筋炎様症状は、多くの場合治療で良くなりますが、レノイー現象や手指腫脹、全身性強皮症様症状は副腎皮質ステロイドが効きにくいため最後まで残ると言われています。

また、レノイー現象など末梢循環障害がある場合には、手足を含めて全身を冷やさないようにすることが大切で、血管の収縮により症状が悪化するため、禁煙が必要です。
症状がひどい場合には血管拡張薬や抗血小板薬が用いられることもあります。

この記事の参考文献・Webサイト

公開日:
最終更新日:2024/10/10