難病患者の海外旅行ガイド

難病・特定疾患の方へ。海外旅行の前にご覧ください。

下垂体前葉機能低下症患者の海外旅行の注意事項

下垂体前葉機能低下症と海外旅行

海外旅行

下垂体前葉機能低下症の方は、症状がコントロールできていれば海外旅行に行くことが可能です。
海外旅行へ行くときは、事前に主治医に相談し、次のことに気をつけて旅行を楽しみましょう。

余裕をもったスケジュールを組みましょう

下垂体前葉機能低下症の人の中には、倦怠感の症状が強く出る人がいます。
無理のない計画を立てて、休憩が取りやすいようスケジュールに余白を設けておくといいでしょう。
自分では体調に問題がないと思っても、長時間の移動や慣れない環境でいつもより疲れやすくなることが考えられるため、疲れたなと思ったらこまめに休憩を取ることも必要です。

水分補給やバランスのいい食事など体調管理は万全に

旅行中は体調を優先して行動し、体調を悪化させないためにもバランスのいい食事を心がけ、ミネラルウォーターやスポーツドリンクを携行してこまめに水分補給をしましょう。
海外旅行先では無理をしてしまいやすいですが、自分の体調をよく確認しながら、休憩を取ったり必要に応じて薬を服用したり、コントロールすることが大切です。

処方薬は滞在日数分より多めに持って行く

下垂体前葉機能低下症の人は、欠乏するホルモンを補うために内服薬や自己注射薬を使用することがあります。
これらの薬を使用している人は、紛失や盗難などのトラブルに備えて旅行の日数分よりも多めに持って行くことが大切です。
また、頓服として服用する可能性のある人は、手荷物に薬とミネラルウォーターを携行するといいでしょう。

薬剤証明書を携行する

点鼻薬や内服薬の処方を受けている人は、念のため渡航前に英文の薬剤証明書を取得して、手荷物に入れて携行しましょう。
自分で使用する薬は航空機内に持ち込むことが認められていますが、特に自己注射薬を使用している人などは、保安検査で確認された時に英文の薬剤証明書があると安心です。

海外旅行傷害保険には必ず加入しておく

海外での急な体調悪化など、予期せぬトラブルに備えて海外旅行傷害保険に加入しておくことが大切です。
海外では医療費が全額自己負担となるため、保険に加入していないと高額な請求を受けることになります

しかし、下垂体前葉機能低下症などの持病がある人は、海外旅行傷害保険に加入できなかったり、持病が補償対象外となってしまったりすることもめずらしくありません。
持病も補償される海外旅行傷害保険は、国内の保険会社では、東京海上日動火災保険とAIG損害保険の2社が販売しています(旅行期間31日までが対象)。
東京海上日動火災保険は最寄りの保険代理店で加入手続きができ、AIG損害保険では保険代理店のほかインターネットでも加入することが可能です。

他の保険会社でも保険代理店などの窓口で加入できる可能性もありますので、各保険会社に問い合わせてみるといいでしょう。
窓口での加入する場合は手続きに時間がかかることがあり、加入を断られてしまう可能性もありますので、渡航前ギリギリではなく事前に余裕をもって手続きしておくことが大切です。

そもそも下垂体前葉機能低下症とはどんな疾患なのか?

診察風景

下垂体前葉機能低下症は国内に約1.9万人の患者がいるとされています。
脳にある下垂体前葉で作られるホルモンの分泌が障害される疾患で、6種類ある下垂体前葉ホルモンのうち、1種類または複数の種類のホルモンの分泌が障害されることにより症状が生じます。

この病気の原因にはさまざまなものがありますが、最も多いのが下垂体腫瘍です。
それ以外にも結核などの炎症性疾患、頭部のケガやくも膜下出血などが原因として発症することがあるほか、はっきりした原因が特定できないこともあります。

下垂体前葉機能低下症の症状

6種類の下垂体前葉ホルモンのうち、分泌が障害されたホルモンごとに生じる症状が異なります。
代表的な症状には以下のようなものがあります。

〇副腎皮質刺激ホルモン:疲れやすさやだるさを感じやすくなる、低血糖、低血圧など
〇甲状腺ホルモン:疲れやすさ、抑うつ、むくみ、低体温、乾燥など
〇成長ホルモン:低身長、肥満、筋力低下など
〇黄体化ホルモン、卵胞刺激ホルモン:女性では生理不順、無月経、男性では性欲の低下、EDなど
〇プロラクチン:女性の分娩後の乳汁分泌低下

下垂体前葉機能低下症の治療方法

原因となっている腫瘍や炎症があれば、まずはそれに対する治療が行われます。
加えて、不足するホルモンを補うために内服薬などが用いられます。

下垂体が障害されると基本的には完治困難で、ホルモンの中には不足すると命にかかわるものもあるため、多くの場合は長期間にわたる服薬が必要です。
しかし、原因となっている病気の治療が完了した後は、欠乏しているホルモンを補充し続けることで、健康な人と同じように日常生活を送ることができます。

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公開日:
最終更新日:2024/08/16