難病患者の海外旅行ガイド

難病・特定疾患の方へ。海外旅行の前にご覧ください。

パーキンソン病患者の海外旅行の注意事項

パーキンソン病と海外旅行

海外旅行

パーキンソン病はモハメド・アリやマイケル・J・フォックス、岡本太郎も患っていた神経系の病気で、日本では10万人以上の患者がおり、難病のなかではメジャーな病気であると思います(私の父も患っています)。

さて、「パーキンソン病でも海外旅行へ行けるのか?」と心配な方もいらっしゃるでしょうが、実際にパーキンソン病を患って、海外旅行を楽しんでいる方はいらっしゃいます。難病でも、海外旅行を諦める必要はありません。バリアフリーツアーを企画している旅行代理店もあります。

海外に行かれるときは次のことに気を付けておきましょう。

薬剤証明書や診断書を携行する

旅行へ行くときも普段服用してくる処方薬を持っていく必要がありますが、処方薬を持って海外へ行くとき、入国審査でトラブルになる可能性もあります(日本では合法な薬であっても、海外では違法な薬があるため)。

そのようなトラブルを避けるために、旅行の前に必ず「英文薬剤証明書」を主治医に発行してもらいましょう。薬剤証明書があれば、治療のための適切な薬であることが証明されるので、トラブルを避けられます。

また、薬剤証明書と一緒に、医師の診断書を併せて持っていると心強いですね。渡航先で体調が悪化したときに、診断書があれば適切な処置をして貰えるでしょう。

薬は多めに持っていく

海外では、どのようなトラブルがあるかわかりません。航空機のトラブルで、予定よりも長く滞在せざるをえないことも考えられます。そのようなトラブルに備えて薬は多めに持って行きましょう。

旅行会社や航空会社に、歩行が困難であることを事前に伝える

ツアーの申し込みや航空機を予約するときに、パーキンソン病で歩行が困難であることを事前に伝えましょう。
事前に伝えておくことで座席を考慮していただけたり、車椅子を事前に準備していただけます。当日に伝えても対応はしていただけるでしょうが、事前に伝えておくことで、空港スタッフも余裕を持って対応できるでしょう。

空港では、無理せずに車椅子を借りる

パーキンソン病の方は、症状によって車椅子を利用している方や杖を利用している方もいます。
普段、車椅子を必要としない方でも、空港内は意外と歩かなければいけない距離が多いので、無理せず空港にある車椅子を借りましょう。

また、機内への移動は、機内専用の幅の狭い車椅子がありますが、台数が限られるので、使用したい場合は早めに申し出ると良いですね。

海外旅行傷害保険には必ず加入しておく

渡航先での体調悪化等、万が一に備えて海外旅行保険の加入しておきましょう。海外では健康保険が効かないため、病院にかかったときの治療費はかなり高額になります

ただ、パーキンソン病などの持病がある場合、健康状態の告知に引っかかり海外旅行保険に加入できないことや、持病については補償対象外とされてしまうケースがあります(治療をしていなくても、経過観察のために定期的に通院していれば告知対象となるのでご注意ください)。

国内の保険会社では東京海上日動火災保険とAIG保険会社の2社が、持病も補償される海外旅行傷害保険を販売しています(旅行期間が31日まで)。
東京海上日動火災保険では最寄りの保険代理店を探して加入することになり、AIG保険会社ではインターネットからも加入することが可能です。

他の保険会社でも保険代理店などの窓口で相談すれば加入できるかもしれませんので、詳しくは各保険会社に問い合わせてみましょう。
窓口での加入の場合は加入審査に時間がかかったり、申し込みをしても加入を断られることもあるので、保険の手続きは余裕をもって早めに済ませておきましょう。

そもそもパーキンソン病とはどんな疾患なのか?

診察風景

パーキンソン病は、脳からの指令がうまく伝わらなくなり、スムーズな動きができなくなる病気です。
脳にある黒質という部位の神経細胞が減ることで、その神経細胞で作られる「ドパミン」が減ります。ドパミンは、脳からの指令を伝える役割をしており、そのドパミンが減ることで、運動の情報がうまく伝わらなくなります。

原因は特定されていませんが、特定の遺伝子に、環境的な要因が加わることで引き起こされると考えられます。

パーキンソン病の症状・治療方法

症状は次のとおりです。

〇振戦:手足の震え、顎の震え

〇禁固縮(筋肉がこわばること):動作がぎこちなくなる、手足がしびれる など

〇無動(動きが遅くなること):動作に時間がかかる、細かい動作がやりづらくなる、表情が乏しくなる など

〇姿勢反射障害(バランスが取りにくくなる):頻繁に転ぶ、なかなか足が前に出ない など

〇その他:便秘、排尿障害、睡眠障害、抑うつ など

治療方法は、薬物療法・リハビリ療法・手術療法があります。
薬物治療では、不足しているドパミンを補う作用の薬を服薬します。薬の種類は、年齢や症状に合わせて、数種類の薬を飲みあわせるのが一般的です。リハビリ療法では、ストレッチなどを行い、日常生活の向上を目指します。
手術療法は、脳深部刺激療法などを行いますが、手術をしても完治するものではなく、症状改善を目的として行われます。

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最終更新日:2024/09/11