難病患者の海外旅行ガイド

難病・特定疾患の方へ。海外旅行の前にご覧ください。

全身性エリテマトーデス患者の海外旅行の注意事項

全身性エリテマトーデスと海外旅行

海外旅行

多最新の治療により、一昔前に比べて予後が格段に良くなった全身性エリテマトーデス。症状が軽くなっていれば、海外旅行へ行くことももちろん可能です。海外旅行へ行くことがストレス解消になるのであれば、良いですよね。

海外旅行へ行くときは、事前に主治医に相談しましょう。また、次のようなことにも注意しましょう。

薬剤証明書や診断書を携行する

全身性エリテマトーデスの方は、症状が軽くなっていても継続的な治療が必要です。海外旅行へ行く際も処方薬を持ち込む必要があります。
ただ、海外へ処方薬を持ち込むとき、入国審査でトラブルになる可能性もあります(処方薬の中には、日本では合法でも、海外では違法になる場合があるためです)。

そのようなトラブルを避けるために、旅行へ行く前には必ず「英文の薬剤証明書」を医師に書いてもらいましょう。
薬剤証明書には、「薬の名称」や「どのような治療に利用されているか」等が記載されます。注射器であっても、薬剤証明書によって適正な治療のために利用されていることが証明されれば、渡航先へ持ち込むことは可能です。

薬剤証明書と併せて、医師の診断書も携行するとなお良いですね。現地で体調が悪化したときでも、薬剤証明書と診断書を見せて適切な医療処置をしてもらえるように準備しておきましょう。

処方薬は多めに持っていく

海外旅行では、災害や航空機のトラブルにより、当初予定していたより長く滞在せざるをえないことも考えられます。予定滞在日数分の処方薬だけしか持っていないと、そのような不測の事態に対応できません。
万が一に備えて、必ず多めに処方薬を持って行きましょう

感染症対策をしっかりとする

ステロイド剤を服用していると、副作用により免疫機能が低下し、感染症にかかりやすくなります。渡航先は必ずしも日本と同様に衛生であるとは限らないので、日頃から感染症対策に気をつけている方でも、十分に対策をしましょう。

航空機内等の移動中はマスクをしたり、こまめに手洗いうがいをするように心がけましょう。渡航先を決めるときも、衛生面のチェックをしっかりしましょう。

強い日差しやストレス等の増悪因子に気をつける

旅行へ行くときは症状が落ち着いていても、日光の当たりすぎやストレスにより、体調が悪化してしまう恐れがあります。
旅行を楽しむためにも、体調を悪化させる原因(増悪因子)はなるべく避けるようにしましょう。

海外旅行傷害保険には必ず加入しておく

渡航先での体調悪化等、万が一に備えて海外旅行保険の加入しておきましょう。海外では健康保険が効かないため、病院にかかったときの治療費はかなり高額になります

ただ、全身性エリテマトーデスなどの持病がある場合、健康状態の告知に引っかかり海外旅行保険に加入できないことや、持病については補償対象外とされてしまうケースがあります。
国内の保険会社では東京海上日動火災保険とAIG保険会社の2社が、持病も補償される海外旅行傷害保険を販売しています(旅行期間が31日まで)。
東京海上日動火災保険では最寄りの保険代理店を探して加入することになり、AIG保険会社ではインターネットからも加入することが可能です。

他の保険会社でも保険代理店などの窓口で相談すれば加入できるかもしれませんので、詳しくは各保険会社に問い合わせてみましょう。
窓口での加入の場合は加入審査に時間がかかったり、申し込みをしても加入を断られることもあるので、保険の手続きは余裕をもって早めに済ませておきましょう。

そもそも全身性エリテマトーデスとはどんな疾患なのか?

診察風景

全身性エリテマトーデスは、抗体を作るBリンパ球が異常に活性化し、それによってできた自己抗体により、臓器に様々な病変を引き起こす膠原病の一種です。
英語では、「Systemic(全身の) lupus(狼の) erythematosus(発疹)」といい、SLEとも呼ばれます。狼に噛まれたような発疹ができることから、このような名称になっています。

2014年に放映されたドラマ「ディア・シスター」で、石原さとみさん演じる主人公が患った病気で、ドラマをご覧になっていた方は、聞いたことがある病名かもしれませんね。

病気の原因は不明ですが、遺伝的要因が大きいことは確実視されています。また、20~40代の女性の患者が多く、この年代の患者数は男性の約10倍です。若年女性に患者が多いことから、女性ホルモンの影響も疑われています(子供や高齢者の発症率は男女差がほとんどありません)。

全身性エリテマトーデスの症状

症状は、個々によって様々です。主な症状は次の通りです。

○全身症状:全身倦怠感、発熱、疲れやすさ、食欲不振等。

○皮膚の症状:蝶形紅斑(蝶が羽を広げたような発疹、バタフライラッシュともいいます)、顔面や首回りの円形紅斑。

○日光過敏:強い紫外線を受けた後の発疹や発熱

○関節炎:関節リウマチに間違われることもあります。

○臓器の症状:約半数が「ループス腎炎」と呼ばれる腎臓の障害を起こします。
約20%が、心外膜炎や胸膜炎を起こします。

○中枢神経の症状:うつ状態・妄想などの精神症状とけいれん・脳血管障害が多く見られます。

○その他:貧血・白血球減少等の血液異常。
抗リン脂抗体がある場合は、習慣性早流産や血栓症など。

全身性エリテマトーデスの治療方法

治療方法は、薬剤療法(主にステロイド剤の服用)・血漿交換療法(血液中にある病気の原因を取り除く療法)・温熱療法があります。薬剤療法から始められる方がほとんどです。
1950年代、全身性エリテマトーデスの5年生存率は50%でしたが、ステロイド剤治療により、現在の5年生存率は95%以上となっています。

この記事の参考文献・Webサイト

公開日:
最終更新日:2024/09/11