多発性嚢胞腎患者の海外旅行の注意事項
多発性嚢胞腎と海外旅行
多発性嚢胞腎の方が海外旅行へ行くときは、事前に主治医に相談し、次のことに気をつけて旅行を楽しみましょう。
こまめな水分補給が重要
多発性嚢胞腎の人は、脱水にならないようこまめに水分を取ることが大切です。
特に乾燥しやすい飛行機の中や、汗をかきやすい暖かい地域へ渡航する場合は注意し、喉が渇いたと感じていなくても意識的に水分を取るようにしましょう。
海外では水道水が危険な地域もあるため、ペットボトルのミネラルウォーターを携行するなど工夫するといいでしょう。
バランスのいい食事を心がける
海外旅行先では現地の食事が楽しみでもありますが、塩分の取りすぎには注意が必要です。
特に高血圧の人など塩分制限が必要となる場合は、機内食を減塩食に切り替えるなど、事前に準備しておくといいでしょう。
また、腎機能の低下がある人は、たんぱく質を取りすぎると腎臓に大きな負担をかけることになるため、食事のバランスに気を付けましょう。
お酒は控えめに
アルコールには利尿作用があるため脱水の原因となります。
お酒は適量にとどめ、飲酒後はお茶やお水を多めに飲むなど、水分補給を忘れないようにしましょう。
薬剤証明書を携行する
薬を服用している場合は、旅行前に英文の薬剤証明書を取得し、手荷物に入れて携行しましょう。
基本的に自分で飲む薬は飛行機内に持ち込むことができますが、保安検査で確認されることもあるため、薬剤証明書があると安心です。
また、荷物の盗難や紛失、トラブルによる帰国の遅れなどのリスクに備えて、薬は日程よりも多めに準備し、手荷物と預入荷物に分けておくなど対策しましょう。
海外旅行傷害保険には必ず加入しておく
海外での急な体調悪化など、予期せぬトラブルに備えて海外旅行傷害保険に加入しておきましょう。
海外では医療費が全額自己負担となるため、保険に加入していないと高額な請求を受けることになります。
ただし、多発性嚢胞腎などの持病がある人は、海外旅行傷害保険に加入できなかったり、持病が補償対象外となってしまったりすることがあります。
国内の保険会社では、東京海上日動火災保険とAIG損害保険の2社が、持病も補償される海外旅行傷害保険を販売しています(旅行期間31日までが対象)。
東京海上日動火災保険は最寄りの保険代理店で加入手続きができ、AIG損害保険では保険代理店のほかインターネットでも加入することが可能です。
他の保険会社でも保険代理店などの窓口で加入できる可能性もありますので、各保険会社に問い合わせてみるといいでしょう。
窓口での加入は手続きに時間がかかったり、加入を断られてしまったりする可能性もありますので、渡航前に余裕をもって手続きしておくことが大切です。
そもそも多発性嚢胞腎とはどんな疾患なのか?
多発性嚢胞腎とは、腎臓内に嚢胞という袋状の病変が多く形成される疾患で、遺伝によって引き起こされることがわかっています。
多発性嚢胞腎には、常染色体顕性多発性嚢胞腎(ADPKD)と常染色体潜性多発性嚢胞腎(ARPKD)があり、ADPKDは成人になってから、ARPKDは新生児期から症状がみられます。
国内には約31,000人の患者がいると推定されており、男女差はあまりないとされています。
多発性嚢胞腎の症状
ADPKDの場合、初期は無症状ですが、徐々に腎臓内に嚢胞が増え、わき腹の痛みや血尿などの症状が出ます。
また、合併症として高血圧や脳動脈瘤、くも膜下出血を起こすことがあります。
多発性嚢胞腎の治療方法
現在のところ、完治させるための治療法がなく、症状を抑え進行を緩やかにするための治療が行われます。
ADPKDに対しては、腎臓の嚢胞が大きくなるのを防いだり、腎臓の働きの低下を抑制したりするための薬物治療が用いられます。
しかし、徐々に腎機能が低下して半数以上が慢性腎臓病に進行し、末期腎不全に至ると透析や腎臓移植などの腎代替療法が必要です。
これらの治療に加えて、患者自身による塩分制限や、脱水予防のための多めの水分摂取、食事管理が特に重要です。
この記事の参考文献・Webサイト
- 難病情報センター(公益財団法人 難病医学研究財団)
- まんがで知る多発性嚢胞腎(一般社団法人 日本腎臓学会)
公開日:
最終更新日:2024/08/29