顕微鏡的多発血管炎患者の海外旅行の注意事項
顕微鏡的多発血管炎と海外旅行
顕微鏡的多発血管炎の方が海外旅行へ行くときは、事前に主治医に相談し、次のことに気をつけて旅行を楽しみましょう。
感染症対策を徹底する
治療内容によっては細菌やウイルスなどへの抵抗力が下がって、感染症にかかりやすくなる恐れがあり、症状を悪化させるリスクとなります。
こまめな手洗いやうがい、人の多い場所でのマスクの着用など、基本的な感染症対策を心がけましょう。
バランスのいい食事を心がける
海外旅行先では食事も大きな楽しみとなりますが、体調や治療状況を踏まえてバランスのいい食事を取るように心がけましょう。
特に塩分は、腎機能の低下がある人には腎臓の負担になるほか、ステロイドによる治療中の人はむくみの原因となるため、取りすぎに注意が必要です。
余裕のある計画を立てる
海外旅行では時差の影響や環境の違いによって、自分が認識している以上に疲れが溜まっていることもあります。
無理のない計画を立て、意識的に休憩を取るようにしましょう。
また、夜間にはしっかりと睡眠時間を確保するなど、規則正しい生活をすることが大切です。
薬剤証明書を携行する
服用している薬を海外旅行に持って行く時は、英文の薬剤証明書を取得して携行しましょう。
自分で服用する薬であれば航空機内にも持ち込むことが可能ですが、保安検査で確認された際に、薬剤証明書を提示するとスムーズです。
荷物の紛失や盗難などのトラブルに備えて、旅行日数よりも多めに用意し、手荷物と預入荷物に分けて持ち運ぶなどの工夫も有効です。
海外旅行傷害保険には必ず加入しておく
海外旅行に行く時は、現地での急な体調悪化など、予期せぬトラブルに備えて海外旅行傷害保険に加入しておきましょう。
海外では医療費が全額自己負担となるため、保険に加入していないと高額な請求を受けることがあります。
ただし、顕微鏡的多発血管炎などの持病がある人は、海外旅行傷害保険に加入できなかったり、持病が補償対象外となってしまったりすることがあるため、よく確認しておきましょう。
国内の保険会社では、東京海上日動火災保険とAIG損害保険の2社が、持病も補償される海外旅行傷害保険を販売しています(旅行期間31日までが対象)。
東京海上日動火災保険は最寄りの保険代理店で加入手続きができ、AIG損害保険では保険代理店のほかインターネットでも加入することが可能です。
他の保険会社でも保険代理店などの窓口で加入できる可能性もありますので、各保険会社に問い合わせてみるといいでしょう。
窓口での加入は手続きに時間がかかったり、加入を断られてしまったりする可能性もありますので、渡航前に余裕をもって手続きしておくことが大切です。
そもそも顕微鏡的多発血管炎とはどんな疾患なのか?
顕微鏡的多発血管炎は、腎臓や肺、皮膚、神経などの臓器にある血管に炎症が起こることで、さまざまな症状が生じる疾患です。
細小動・静脈や毛細血管などの小型血管(顕微鏡で観察できる太さの血管)に炎症が起こることが特徴です。
日本国内には約1万人の患者がいるとされ、50代以上に多く、発症時の平均年齢は71歳というデータがありますが、どの年齢にも発症することがあります。
免疫異常が原因と考えられていますが、詳しい原因はわかっていません。
顕微鏡的多発血管炎の症状
初期には発熱や食欲不振、疲れやすさや筋痛・関節痛などの症状が現れます。
血管炎の生じる部位によって現れる症状が異なり、腎臓に炎症が現れた場合は血尿、尿潜血やたんぱく尿などの尿検査異常、クレアチニン上昇による腎機能低下などがみられます。
また、肺に炎症が生じた場合は、喀血、血痰、空咳、息切れなどの症状がみられ、間質性肺炎や肺胞出血に至ることがあります。
腎臓や肺では急性な経過で進行する場合が多いとされており、症状が進むと透析治療や酸素投与、人工呼吸器が必要となる場合もあります。
顕微鏡的多発血管炎の治療方法
顕微鏡的多発血管炎の治療は、寛解導入治療から寛解維持治療を目標とします。
まずは血管の炎症を完全に消失させるため、副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬などが用いられ、寛解に至ればステロイドを減量します。
初期にしっかりと治療すれば8割以上が寛解に至るという報告もありますが、治療の遅れや治療の反応が良くない場合などは、寛解導入までに時間がかかることもあります。
治療中は感染症対策が重要となるため、手洗いやうがい、マスクの着用などの基本的な感染症対策と、インフルエンザや肺炎球菌などのワクチン接種を受けることが大切です。
寛解状態に至った場合も、再発防止のための定期的な診察や継続的な服用が必要です。
この記事の参考文献・Webサイト
- 難病情報センター(公益財団法人 難病医学研究財団)
- 顕微鏡的多発血管炎(microscopic polyangiitis: MPA)(慶應義塾大学病院)
公開日:
最終更新日:2024/08/29