難病患者の海外旅行ガイド

難病・特定疾患の方へ。海外旅行の前にご覧ください。

後縦靭帯骨化症患者の海外旅行の注意事項

後縦靭帯骨化症と海外旅行

海外旅行

後縦靭帯骨化症を患っていても、日常生活において制限のある方は少なく、海外旅行へ出かけている方もいらっしゃいます。

海外に行かれるときは次のことに気を付けておきましょう(自覚症状がある方は、出発前に必ず主治医に相談しましょう)。

薬剤証明書や診断書を携行する

旅行へ行くときも普段服用してくる処方薬を持っていく必要がありますが、処方薬を持って海外へ行くとき、入国審査でトラブルになる可能性もあります(日本では合法な薬であっても、海外では違法な薬があるため)。

そのようなトラブルを避けるために、旅行の前に必ず「英文薬剤証明書」を主治医に発行してもらいましょう。薬剤証明書があれば、治療のための適切な薬であることが証明されるので、トラブルを避けられます。

また、薬剤証明書と一緒に、医師の診断書を併せて持っていると心強いですね。渡航先で体調が悪化したときに、診断書があれば適切な処置をして貰えるでしょう。

薬は多めに持っていく

海外では、どのようなトラブルがあるかわかりません。航空機のトラブルで、予定よりも長く滞在せざるをえないことも考えられます。そのようなトラブルに備えて薬は多めに持って行きましょう。

旅行中の転倒や姿勢に気を付ける

後縦靭帯骨化症の方は、転倒などの軽微な外力で、神経の障害が急速に進行したり、四肢麻痺になることもあります。
日本と違ってヨーロッパに多い石畳の道路は、特に転倒しやすいので注意が必要です。他にも古代遺跡をめぐるときなども、足場が悪い場所が多く、転倒しやすいので注意してください。

また航空機での移動のときには長時間同じ姿勢になってしまうことがあります。首を後ろに反らせる姿勢が続くことで脊柱管が狭くなってしまうので、なるべく避けるようにしましょう。

海外旅行傷害保険には必ず加入しておく

渡航先での体調悪化等、万が一に備えて海外旅行保険の加入しておきましょう。海外では健康保険が効かないため、病院にかかったときの治療費はかなり高額になります

ただ、後縦靭帯骨化症などの持病がある場合、健康状態の告知に引っかかり海外旅行保険に加入できないことや、持病については補償対象外とされてしまうケースがあります(治療をしていなくても、経過観察のために定期的に通院していれば告知対象となるのでご注意ください)。

国内の保険会社では東京海上日動火災保険とAIG保険会社の2社が、持病も補償される海外旅行傷害保険を販売しています(旅行期間が31日まで)。
東京海上日動火災保険では最寄りの保険代理店を探して加入することになり、AIG保険会社ではインターネットからも加入することが可能です。

他の保険会社でも保険代理店などの窓口で相談すれば加入できるかもしれませんので、詳しくは各保険会社に問い合わせてみましょう。
窓口での加入の場合は加入審査に時間がかかったり、申し込みをしても加入を断られることもあるので、保険の手続きは余裕をもって早めに済ませておきましょう。

そもそも後縦靭帯骨化症とはどんな疾患なのか?

診察風景

後縦靭帯骨化症は、後縦靭帯が骨になることで、脊髄の入っている脊柱管が狭くなり、感覚障害や運動障害を引き起こす病気です。後縦靭帯は、椎体と椎間円板の後方に沿って縦に伸びる靭帯です。

後縦靭帯の骨化は、日本人の約3%がなると言われています。老化や肥満など様々な要因により骨化が起こるのですが、家族内発症が多いことから、遺伝の関連が有力視されています。

後縦靭帯骨化症の症状・治療方法

骨化する部位によって、「頚椎後縦靭帯骨化症」「胸椎後縦靭帯骨化症」「腰椎後縦靭帯骨化症」と区別されます。それぞれの症状は次の通りです。

○頚椎後縦靭帯骨化症:首筋や肩甲骨周辺、指先に痛みやしびれが現れます。症状が進行すると、痛みやしびれの範囲が広がり、脚のしびれや感覚障害・足が思うように動かない運動障害などが起こります。重症化すると、歩行困難や排尿・排便障害になります。

○胸椎後縦靭帯骨化症:体幹や下半身、下肢の脱力感やしびれが現れます。重症化すると、歩行困難や排尿・排便障害になります。

○腰椎後縦靭帯骨化症:歩行時に下肢の痛みやしびれが現れます。

ただ、後縦靭帯骨化症になっても、症状が出る方はごく一部です。また、症状が出ても、半数以上の方の症状は進行しません。

治療法は、薬物療法(消炎鎮痛剤や筋弛緩剤などの服用)と外固定装具の着用(圧迫された神経を保護するため)が一般的です。症状が重いときは、手術をします。
自覚症状がないときは、特に治療は必要ないですが、黄色靭帯骨化症などの合併症を引き起こしていないか・骨化が大きくなっていないか等を確認するために、定期的にレントゲン検査をする必要があります。

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最終更新日:2024/09/11