原発性胆汁性胆管炎の患者が海外旅行に行く際の注意事項
原発性胆汁性胆管炎と海外旅行
原発性胆汁性胆管炎を患っていても、無症候性の方は薬を飲み続ければ、日常生活の大きな制限もなく、海外旅行へ行くことは可能です。
進行度合いを見ながら医師にも相談しましょう。
海外旅行へ出かけるときは、次の事に気をつけてください。
薬剤証明書や診断書を携行する
旅行へ行くときも普段服用してくる処方薬を持っていく必要がありますが、処方薬を持って海外へ行くとき、入国審査でトラブルになる可能性もあります(日本では合法な薬であっても、海外では違法な薬があるため)。
そのようなトラブルを避けるために、旅行の前に必ず「英文薬剤証明書」を主治医に発行してもらいましょう。薬剤証明書があれば、治療のための適切な薬であることが証明されるので、トラブルを避けられます。
また、薬剤証明書と一緒に、医師の診断書を併せて持っていると心強いですね。渡航先で体調が悪化したときに、診断書があれば適切な処置をして貰えるでしょう。
薬は多めに持っていく
海外では、どのようなトラブルがあるかわかりません。航空機のトラブルで、予定よりも長く滞在せざるをえないことも考えられます。そのようなトラブルに備えて薬は多めに持って行きましょう。
航空機は、なるべくトイレの近くに座る
原発性胆汁性胆管炎の患者の多くが服用しているウルソデオキシコール酸は、副作用で下痢をすることがあります。副作用に備えて、移動時間の長い航空機内では、なるべくトイレの近くの座席を取りましょう。
事前に航空会社に申し出れば、考慮してくれます。
余裕を持ったスケジュールを立てる
症状が進行している方は、肝臓に負担がかからないように、旅行先ではあまり疲れすぎないようにしてください。夜はホテルでゆっくりするなど、余裕を持ったスケジュールを立ててください(事前に主治医からもアドバイスを貰うといいでしょう)。
食事に気をつける
こちらも症状が進行している方に関してですが、医師の指導などにより食事制限をしている方は、旅行先でも気をつけてください。
事前に、旅行先のレストランをインターネットなどで調べることをお勧めします。
海外旅行傷害保険には必ず加入しておく
渡航先での体調悪化等、万が一に備えて海外旅行保険の加入しておきましょう。海外では健康保険が効かないため、病院にかかったときの治療費はかなり高額になります。
ただ、原発性胆汁性胆管炎などの持病がある場合、健康状態の告知に引っかかり海外旅行保険に加入できないことや、持病については補償対象外とされてしまうケースがあります(治療をしていなくても、経過観察のために定期的に通院していれば告知対象となるのでご注意ください)。
国内の保険会社では東京海上日動火災保険とAIG保険会社の2社が、持病も補償される海外旅行傷害保険を販売しています(旅行期間が31日まで)。
東京海上日動火災保険では最寄りの保険代理店を探して加入することになり、AIG保険会社ではインターネットからも加入することが可能です。
他の保険会社でも保険代理店などの窓口で相談すれば加入できるかもしれませんので、詳しくは各保険会社に問い合わせてみましょう。
窓口での加入の場合は加入審査に時間がかかったり、申し込みをしても加入を断られることもあるので、保険の手続きは余裕をもって早めに済ませておきましょう。
そもそも原発性胆汁性胆管炎とはどんな疾患なのか?
原発性胆汁性胆管炎は、胆汁の通り道である胆管が壊れ、胆汁の流れが滞ってしまう病気です。病気の原因は、はっきりと分かっていませんが、自己免疫反応によるものと考えられています。中年以降の女性に多い病気で、50~60歳以降に好発します。
以前は、初期症状の段階では判断がつかずに、肝硬変に進行してから病気が発覚することが多かったのですが、現在は無症状の段階で、血液検査により病気を発見することができます。
病名に「肝硬変」とついているのは、肝硬変に進行してから病気が発覚していた時代の名残ですね。
原発性胆汁性胆管炎の症状
この病気は、無症状の「無症候性」と何らかの症状がある「症候性」とに分けられます。
症候性の主な症状は、次の通りです。
○皮膚の強いかゆみ(胆汁に含まれる成分が、血液中に逆流することで起きます。)
○疲れやすさ、だるさ
○食道・胃静脈瘤(食道や胃の静脈が腫れることです。)
○肝硬変に進行すると、むくみ・腹水・黄疸・意識障害(肝性脳症) など
また、ビタミンDを吸収しずらくなることから骨粗鬆症を引き起こしたり、血中コレステロールの上昇などの合併症を引き起こします。
原発性胆汁性胆管炎の治療方法
治療法は、主に投薬治療です。重症の黄疸の方を除いたほとんどの患者が、ウルソデオキシコール酸の服薬をします。
この薬は、漢方では「熊胆(くまのい)」といい、胆汁の流れを促進し、症状の進行を抑える役割があります。副作用で、下痢や胃痛を引き起こすこともありますが、ウルソデオキシコール酸は元々人間の体内にもある成分(胆酸の一種)であるので、長期間の服用が可能です。
日本だけではなく、世界各国で、原発性胆汁性肝硬変の治療に使用されています。
ウルソデオキシコール酸以外にも、皮膚のかゆみに対しては抗ヒスタミン薬を使用するなど、それぞれの症状に合わせた治療をします。
この記事の参考文献・Webサイト
- 難病情報センター
- 海外旅行医学ハンドブック(山と溪谷社 2003/3/1)
公開日:
最終更新日:2024/09/11