網膜色素変性症患者の海外旅行の注意事項
網膜色素変性症と海外旅行
網膜色素変性症の方が、海外旅行へ行くときは、事前に主治医に相談し、次のことに気をつけて旅行を楽しみましょう。
必ずサングラスを持っていく
強い光は、視細胞の寿命を縮めてしまい、視野狭窄の進行を加速させます。屋外で観光をするときは、必ずサングラスをしましょう。
屋内の光は、視細胞に影響を与えるほどのものではないので、大丈夫です。
転倒に十分に気をつける
視野狭窄が進んでくると、足元が見づらくなります。ヨーロッパに多い石畳は転倒しやすいです。
また、バリアフリーが進んでいない地域もありますので、転倒によるケガには十分に注意しましょう。
薬剤証明書や診断書を携行する
海外へ処方薬を持ち込むときは、主治医が書いた英文の薬剤証明書を準備しましょう。薬剤証明書があれば、入国審査で「違法薬物ではないか」と疑われるようなトラブルを回避することができます。
処方薬は多めに持っていく
海外旅行では、災害や航空機のトラブルにより、当初予定していたより長く滞在せざるをえないことも考えられます。予定滞在日数分の処方薬だけしか持っていないと、そのような不測の事態に対応できません。
万が一に備えて、必ず多めに処方薬を持って行きましょう。
空港でのお手伝いが必要な場合、事前に申し出る。
空港は、バリアフリー化が進んでいますが、意外と歩く距離は長いです。また、航空機内の通路は狭いので、視野狭窄が進んでいる方には、非常に歩きづらいかもしれません。
もし、空港でお手伝いが必要な場合は、当日ではなく事前に申し出ましょう。当日に申し出ても、お手伝いをしてもらえますが、事前にお願いしておくほうが、スムーズにお手伝いしてもらえます。
海外旅行傷害保険には必ず加入しておく
渡航先での体調悪化等、万が一に備えて海外旅行保険の加入しておきましょう。海外では健康保険が効かないため、病院にかかったときの治療費はかなり高額になります。
ただ、網膜色素変性症などの持病がある場合、健康状態の告知に引っかかり海外旅行保険に加入できないことや、持病については補償対象外とされてしまうケースがあります。
国内の保険会社では東京海上日動火災保険とAIG保険会社の2社が、持病も補償される海外旅行傷害保険を販売しています(旅行期間が31日まで)。
東京海上日動火災保険では最寄りの保険代理店を探して加入することになり、AIG保険会社ではインターネットからも加入することが可能です。
他の保険会社でも保険代理店などの窓口で相談すれば加入できるかもしれませんので、詳しくは各保険会社に問い合わせてみましょう。
窓口での加入の場合は加入審査に時間がかかったり、申し込みをしても加入を断られることもあるので、保険の手続きは余裕をもって早めに済ませておきましょう。
そもそも網膜色素変性症とはどんな疾患なのか?
網膜色素変性症は、光を感知する役割の「視細胞」が年齢よりも早く老化し、機能しなくなる(光を感じ取れなくなる)遺伝性の病気です。
夜盲(鳥目)の症状から、徐々に視野が狭くなり、失明することもあります。ただ、個人差はありますが、病気の進行は非常にゆっくりであるため、必ずしも失明するわけではありません。
遺伝子が関係した病気のため、病気を完治させる根本的な治療方法はありません。強い光を避けることや、処方薬(暗順応改善薬、ビタミン剤、網膜循環改善薬など)での対症療法で症状の進行を遅らせます。
この病気は、白内障や緑内障を併発することも多いです。白内障・緑内障は治療可能ですので、これらの治療をしっかりすることで、視野狭窄の進行を遅らせられることもあります。
この記事の参考文献・Webサイト
- 目と健康シリーズ(株式会社三和化学研究所)
- 海外旅行医学ハンドブック(山と溪谷社 2003/3/1)
公開日:
最終更新日:2024/09/11