難病患者の海外旅行ガイド

難病・特定疾患の方へ。海外旅行の前にご覧ください。

黄色靱帯骨化症患者の海外旅行の注意事項

黄色靱帯骨化症と海外旅行

海外旅行

黄色靱帯骨化症の方は、症状が悪化や重症化していない限り、海外旅行にも問題なく行くことができます。
治療状況などに応じて心配事があれば事前に主治医に相談し、次のことに気をつけて旅行を楽しみましょう。

転倒には注意しましょう

黄色靱帯骨化症の人は、軽い転倒や転落といった外傷によって、症状が急激に悪化する恐れがあるため注意が必要です。
特に観光地では、体を動かす魅力的なアクティビティも多いですが、胸椎に衝撃の加わるリスクがないかよく確認しましょう。
特に心配な場合は、渡航前にかかりつけ医に相談しておくと安心です。

外での飲酒は控えめにしましょう

旅行先では外で食事を取って、徒歩でホテルに戻ることもめずらしくありません。
しかし、ほろよいで歩いていると、わずかな段差に足を取られて転倒してしまう危険もあるため、外での飲酒は控えめにしておきましょう。

薬は予備を持っておきましょう

定期的に薬を飲んでいる人はもちろん、痛み止めなどの薬を服用する可能性がある人も、予備を含めてすこし多めに持っておくと安心です。
海外では引ったくりなど盗難のリスクに加え、航空機でのロストバゲージなど荷物ごと紛失してしまうことも考えられます。

薬剤証明書を携行しましょう

病院で処方された薬を持って行く時は、念のためかかりつけ医で英文の薬剤証明書を取得しておくといいでしょう。
自分で使用する薬であれば海外旅行へ持って行くことができますが、保安検査で確認された時に提示できると安心です。

海外旅行傷害保険には必ず加入しておく

海外での急な体調悪化などの予期せぬトラブルに備えて、出発前に海外旅行傷害保険に加入することが大切です。
海外では医療費が全額自己負担となるため、保険に加入していないと高額な請求を受けることになります

ただし、黄色靱帯骨化症などの持病がある人は、海外旅行傷害保険に加入できないことも多く、加入できたとしても持病が補償対象外となってしまうことがあります。
国内の保険会社では、東京海上日動火災保険とAIG損害保険の2社が、持病も補償される海外旅行傷害保険を販売しています(旅行期間31日までが対象)。
東京海上日動火災保険はお近くの保険代理店で加入手続きができ、AIG損害保険では保険代理店やインターネット経由で加入することが可能です。

他の保険会社でも保険代理店の窓口などで加入できる可能性もありますので、各保険会社に問い合わせてみるといいでしょう。
窓口での加入は手続きに時間がかかることがあるほか、加入を断られてしまうこともありますので、渡航前に余裕をもって手続きしておくことが大切です。

そもそも黄色靱帯骨化症とはどんな疾患なのか?

診察風景

黄色靱帯骨化症は、脊髄の背中側にある黄色靭帯という靭帯が骨化する疾患です。
骨化がだんだん大きくなると、神経を圧迫することで足の麻痺が生じます。
一方で、骨化があっても神経麻痺が起こらなければ、黄色靱帯骨化症とは診断されません。
脊髄の中でも胸椎に起こることが多く、X線(レントゲン)検査では見つかりにくいため、CTやMRI検査が行われます。

発症は40代以上に多く、男女の差はないと言われています。
原因は特定されていませんが、外部から加わる力、加齢、遺伝、代謝など複合的な要因によるものと考えられます。

同じく指定難病となっている「後縦靭帯骨化症」と合併することがありますが、後縦靭帯骨化症は頸椎に生じやすいことから、手のしびれなど上肢に症状が表れるという違いがあります。

黄色靱帯骨化症の症状

黄色靱帯骨化症では、骨化があるだけで深刻な症状が出ることはほとんどありません。
初期症状として、下肢の脱力やしびれ、こわばり、歩きにくさなどが表れます。
痛みはない場合が多いですが、腰背部や下肢に痛みが出ることもあります。

他にも、頻尿や尿漏れなどの排尿障害、数百メートル歩くと少し休むといった間欠跛行という症状が表れることもあります。
骨化する部分は胸椎に多いことから、症状が出るのは足のみで、手に症状がでることはありません。
ただし、後縦靭帯骨化症を合併している場合は手にしびれなどの症状がみられます。

進行の程度は患者ごとに大きく異なり、何年もほとんど進行しない人がいる一方で、数か月といった短期で症状が進み、歩行困難になる人もいます。
また、転倒の衝撃など軽い力が加わるだけでも、急に症状が悪化することがあります。
重症化すると歩行困難となることもあり、転倒による脊髄損傷が要因となることがあります。

黄色靱帯骨化症の治療方法

症状がない場合、投薬などの治療は行われません。
脊髄など神経の圧迫が強く、それに伴う症状があれば、消炎鎮痛剤、筋弛緩剤、ビタミンB剤など症状に応じた薬が用いられます。

骨化した靭帯はだんだん大きくなっていくことがあり、神経を圧迫して麻痺が強くなった場合は、人体の骨化を取り除く手術が行われることもあります。
転倒による軽い衝撃も、脊髄損傷などの大きなリスクとなり得るため、普段から転ばないよう注意しておく必要があります。

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