難病患者の海外旅行ガイド

難病・特定疾患の方へ。海外旅行の前にご覧ください。

全身性エリテマトーデスの私がハワイへ海外旅行

難病患者のハワイ旅行記

ハワイ旅行

旅行計画をどうたてたか

私は、膠原病の中の一つ、全身性エリテマトーデス(通称SLE)で、2009年に罹患して現在7年目になります。
2010年9月中旬にアメリカのハワイ州に5泊7日で渡航してきました。難病になる前は、手軽に思いつきで旅行をしたりしていましたが、難病になって初めての海外旅行となる今回は、今までとは違うものになることは承知の上での旅行計画でした。

今回の旅行で、幾つか気をつけた点があります。

薬を常用しているので、薬の量が多いうちは免疫力が低下しているので、感染の危険があり、海外はもとより国内旅行もしませんでした。だいぶ薬の量が減った頃、免疫力低下のリスクも減ってきて体調も良くなってきたので、気分転換に海外旅行を計画することを思い立ちました。そこで一番気をつけた点が、行き当たりばったりの旅行はやめること! です。

体力的にも、以前の自分とは違います。一緒に渡航する家族(主人、4歳の子供一人)には申し訳ない気持ちもありましたが、今回の旅は私がマイペースで行動できる範囲だけで旅行計画にすることにしました。
勿論その中でも、家族には楽しんでもらいたいので、家族全員が楽しめるよう計画をしました。特に子供には、私が入院した一ヶ月間は辛い思いをさせてしまったので、思いっきり楽しんでいる顔を見たかったのです。

日光過敏・日焼けの対策をしっかり行った

渡航先として選んだハワイは灼熱のビーチが有名ですが、全身性エリテマトーデスの患者は日光過敏の方が多いです。ハワイに行くことに悩みもしましたが、でも日光がない街はありませんよね(笑)。それならばと、どうやったら日焼け防止をした旅行が出来るかを計画時は気をつけました。

計画をする中で、ビーチ以外で何ができるのか?家族がビーチにいる間、どのような格好だったら一緒にビーチに行けるか?とにかく日焼けしない方法!を考えました。
何より余裕を持った旅行にするため、事前準備で現地レストランのリサーチをし、人気店でもあっても前日予約はせず現地でその日・その場の体調と相談しながらレストランに予約をすることにしました。

ホテルではプールやプライベートビーチを選択

室内で過ごす時間も多い事を想定し、ホテル内の設備やレストランが充実しているところをリサーチしました。
もちろんお値段は上がってしまうのですが、今回はのんびりすることが目的の旅行と決めて、ホテル内にプールがあり、ビーチもホテルのプライベートビーチがあるところにしました。
そうすることによって、家族がビーチやプールに行っても、ホテル部屋から眺めることも出来ますし、少しだけ見学に行くことも可能となりました。

主治医からのアドバイス

主治医には、渡航計画を始めた頃に話をしました。
「難病は治ることはないので、病状が安定している寛解の時は何をしても自由だよ」 とおっしゃってました。ただ、やはり治ってるわけではなく、病状が安定しているだけなので、健康だった時とは違うということを何度もお話ししていました。

日光過敏症は日焼けにより病状が悪化することがあります。主治医にも、日焼けだけには十分に気をつけるようにと助言いただきました。
これはハワイに限らずどこへ渡航しても同じですが、特に灼熱日光の街ハワイは、気をつけるようにとのことでした。万が一に現地で具合が悪くなったことも想定して、ホテルの近くに病院があるか調べていくと良いと言われました。
この病気はアメリカでも重々認知されていて、アメリカでの罹患者は沢山いるので、現地ドクターも対応できるとアドバイスをもらえました。

旅行先に持って行った荷物や準備

海外旅行をするにあたり、準備は念には念を入れてやりました。家族からは、何泊するの?って言われるぐらいの大荷物になりましたが(笑)、やはり難病発症後初の渡米だったので、自分で納得いくよう、必要と感じたものはすべて持参しました。

薬は多めに持参

私は日頃から常備薬として頭痛薬などは持っていて、海外旅行ではやはり薬は必需品です。大袈裟かもしれませんが、いつも飲んでいる薬はパスポートより重要 だと思います。
今回は主治医にお願いをし、万が一飛行機が遅れて帰国日がずれた場合などを想定して、通常飲んでいる薬の量のプラスして一週間分も余分に薬を持参しました。その他にも、風邪薬・頭痛薬なども主治医に処方してもらいました。
また、自分の病名や薬の量について、できる限り自分自身で英文メモにして持参しました。病気が悪化した時のために、想定する範囲内の病状の説明ができる英単語、英文もメモにしました。

その他には
・大量の日焼け止め
・日傘
・マスク
・日常使っているウガイ薬です。

特に日焼け止めは、日常使っているものを大量に持って行きました。現地調達も可能ですが、海外製品は成分も調べないとわからないものなどが入っている場合もあるので、日頃から使い慣れているものを持参するのがいいと思います。
あと日焼け止めと同じぐらいハワイで重宝したのが、UVカットの長袖 ですね。

念には念をと、色々なことを想定した上でこんなに準備をしたので、今回のハワイ旅行では準備不足に感じたものはなく、現地で不便や不足を感じることは無かったです。

難病患者が海外旅行に行くことについて

私自身も最初に難病とわかって入院した時は、相当落ち込み、もう二度と普通の生活ができないと思い込みました。でも、退院して今までの元気だった頃の生活と全く同じでなくても、自分にとっての『普通の生活』をすれば良いと思うようになりました。

薬もだいぶ減ってきて、寛解期になって日常生活を送れるようになった時、また大好きな旅行を再びしたいと思うようになりました。
ハワイは日焼け防止や日光過敏症の点からみるとあまり最適な場所ではありませんでしたが、それでもハワイを選んだのは、ハワイの夕焼けを見ながらリラックスしたいという夢が私にはあったからです。

旅の計画を進める中で、自分だけビーチやプールで泳いだりできないとか、ハワイに行っても長袖や長ズボン、帽子に日傘という格好をしてる自分をイメージしてると「ハワイ旅行計画を断念した方が良いのではないか」と思ったこともありました。
でも、今の自分は今の自分であり、他の方とは違うのは変えようのない事実なのですからでも、難病だからとハワイ旅行を諦める理由にはならないと思ったのです。
どんな格好でビーチを歩いたとしても、ホテル内でほとんどの時間を過ごしたとしても、それは私と私の家族の旅の思い出になると思い、私と家族が楽しめる旅の計画を進めました。

旅行もリハビリの1つ

難病は不治の病だからこその名ですが、不治の病でも楽しめることは沢山あります。自分や家族のできる範囲の旅行計画をすることで、すごく満足な旅ができると思います。
これは海外旅行に限らず、国内旅行や日帰り旅行にも当てはまると思います。

もちろん健康な方とは違って、衛生面などでも人一倍気をつけたりしなくてはいけないことがありますし、渡航先もチョイスが限られてきてしまうこともあります。
でも、車椅子や何らかのハンディーキャップがあっても海外ではとても歓迎してくれます。健康な方のように飛び入りで行動するのは難しくても、事前にリサーチしていけば私なりの、私だけの、私と私の家族だけの貴重な体験ができ、楽しい思い出ができます。

あと、海外旅行へ行って気分転換するのも一つのリハビリだと私は思っています。病状が落ち着かれて海外旅行へ行くチャンスが訪れたなら、そのチャンスを自分のために使うべきだと思います。
その際は主治医に一言相談し、アドバイスをもらうことも重要です。英語や外国語が苦手で、万が一の時が心配な場合は、日本人の多い街・国を選び、日本から近い国を渡航先に選び、徐々に体を慣らしていくのも一つの方法だと思います。

難病だから海外旅行ができない!と諦めるのは、絶対にもったいないです。私も一度は諦めかけましたが、一度行くと自信がつきます。
それに、万が一また再発や再熱してしまった時も、楽しかった旅行を思い出せば、また旅行に行けるよう頑張って治療・リハビリする励みにもなるかと思います。

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