難病患者の海外旅行ガイド

難病・特定疾患の方へ。海外旅行の前にご覧ください。

特発性拡張型心筋症患者の海外旅行の注意事項

特発性拡張型心筋症と海外旅行

海外旅行

特発性拡張型心筋症の方が海外旅行へ行くときは、事前に主治医に相談し、次のことに気をつけて旅行を楽しみましょう。

渡航可否は事前によく確認しておく

通常、航空機内は地上よりも気圧が低く、酸素分圧も地上の70~80%程度まで低下します。
特発性拡張型心筋症によって心臓の機能が低下している人は、酸素を取り込むのが難しくなり、心臓に負担がかかることになります。

飛行機を利用して海外旅行に行く場合は、渡航前にかかりつけの医師に相談をすることが必要です。
また、急に体調を崩してしまった場合の対処方法や現地の病院へのかかり方なども確認しておくといいでしょう。

時差のある国に行く時は、薬を飲む時間注意

ヨーロッパやアメリカなど、日本と時差の大きい地域に渡航する場合、普段服用している薬を飲む時間に注意が必要です。
毎日同じ時間に薬を飲んでいる人は、日本と現地の時差を考慮してタイミングを調整しないと、薬が効きすぎたり、効かなくなったりなどトラブルを起こす可能性があります。
そのため、出発時と帰国時の薬を飲む時間についても医師に確認しておくといいでしょう。

旅行中も規則正しい生活が大切です

海外旅行に行くとどうしても食べ過ぎたり、無理をしたりしてしまいがちです。
過度な飲酒を控えて、バランスのいい食事をとるなど、普段と同様に健康的な生活を心がけましょう。

また、自分が思っているよりも疲れが溜まっていることも考えられるため、適度に休憩を取り、夜には十分な睡眠時間を確保しましょう。

薬剤証明書や診断書を携行する

薬や医療機器を使用している人は、必要に応じて英文の薬剤証明書や診断書を準備しておきましょう。
基本的に自分で使う薬や医療機器は航空機内に持ち込むことが可能ですが、搭乗前に確認された時に説明できるよう、書類は手荷物に入れて持っておくことが大切です。

海外旅行傷害保険には必ず加入しておく

海外での急な体調悪化など、予期せぬトラブルに備えて海外旅行傷害保険に加入しておくことが大切です。
海外では医療費が全額自己負担となるため、保険に加入していないと高額な請求を受ける恐れがあります

ただし、特発性拡張型心筋症などの持病がある人は、海外旅行傷害保険に加入できなかったり、持病が補償対象外となってしまったりすることがあります。
国内の保険会社では、東京海上日動火災保険とAIG損害保険の2社が、持病も補償される海外旅行傷害保険を販売しています(旅行期間31日までが対象)。
東京海上日動火災保険は最寄りの保険代理店で加入手続きができ、AIG損害保険では保険代理店のほかインターネットでも加入することが可能です。

この2社以外の保険会社でも保険代理店などの窓口で加入できる可能性もありますので、各保険会社に問い合わせをしてみるといいでしょう。
窓口での加入は手続きに時間がかかったり、加入を断られてしまったりする可能性もありますので、渡航前に余裕をもって手続きしておくことが大切です。

そもそも特発性拡張型心筋症とはどんな疾患なのか?

診察風景

拡張型心筋症は、心臓を動かしている筋肉が弱くなることで、収縮する力が低下し、左心室が拡張してしまう疾患です。
心臓は全身に血液を送り出すポンプの役割をしているため、拡張型心筋症になるとポンプの機能が低下する心不全に繋がる場合もあります。
特発性拡張型心筋症の原因は不明とされていますが、近年ではウイルス感染や免疫異常などが関わっているのではないかと考えられています。

国内の患者数は18,000人ほどですが、自覚症状のない人を含めると実際にはもっと多いと言われています。
60歳前後の年代に多いとされているものの、子どもから高齢者まで発症することがあり、女性よりも男性のほうが多い傾向です。

特発性拡張型心筋症の症状

自覚症状には、動悸や呼吸困難、普段より疲れやすくなる易疲労感などがみられます。
初期にはこれらの症状が運動時に現れますが、症状が進むと安静時にも出現するようになり、夜間に呼吸困難を起こすこともあります。

心臓の機能低下が進むと、浮腫や不整脈がみられるようになり、脈が早くなる心室頻脈は急死の原因にもなります。

特発性拡張型心筋症の治療方法

一般的には投薬治療が行われますが、心臓の負担を減らし、心臓の障害を悪化させないための治療です。
また、不整脈がひどい時は不整脈薬や、体内に水分が溜まってしまう場合は利尿剤によって水分を排出させ、心臓の負担を減らす方法が取られます。

さらに、心不全がある場合は心不全の治療を行いますが、病状が進行すると心臓移植が検討されます。
現在、日本国内で行われる心臓移植適応症例のうち、拡張型心筋症が80~90%を占めているというデータがあります。

拡張型心筋症による心不全は塩分制限が重要となるため、患者自身による食生活の改善や無理のない程度の運動、継続的な薬の服用が求められます。
この疾患は急速に症状が悪化することがあるため、早期かつ継続的な治療が大切です。

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公開日:
最終更新日:2024/08/29